きんぴか極楽(本願寺×光秀)
「筋肉で止めます!」
扉を開けると、屈強な男達が一斉に飛びかかってきた。ここに至るまで筋肉自慢の僧侶を散々切り刻んできた光秀であったが、まだ本堂にかなりの人数が立て篭っていたようである。
「おやおや……」
見切るまでもない緩慢な動きは、避けることなど雑作もない。
だが敢えて、光秀はその身を捕らえさせた。
数え切れぬ程の味方を葬った憎き相手を取り押さえ、男達は荒ぶる猪のように鼻息を荒らげている。
「拙僧達の筋肉に畏れ入ったか」
光秀の視界に堆く積み上がる筋肉達磨の山の向こうに湯気がむんむんと立ち込めた。 どことなく、周囲の気温が上がった気さえする。 温度と湿度の震源地、本願寺顕如が高笑いと共に姿を現した。
「これはこれは……皆さんお揃いでの歓迎、誠にありがとうございます」
俯せで床に押さえつけられた光秀は笑顔で顕如を見上げる。 その身体からは、芳しい返り血の匂いが立ち込めていた。それは汗や呼気と交わり天然の媚薬となって、禁欲を美徳とする男達に獣の本能を思い出させる。 無論、顕如とてその例外ではなかった。 光秀が、ゆっくりと瞬きをする。長い睫毛が、胸の奥に燻る情欲の火種を扇ぐように擽る。
「少々、遊んで差し上げてもよろしいですよ?」
ごくり、と誰かが喉を鳴らした。
「えぇい!こやつに拙僧達の筋肉の力を見せつけてやるのだ」
顕如の号令で、男達は一斉に光秀の装備を毟り取る。
「ふふふ、もっと優しくしてください……僧とは、意外とせっかちなものなのですね」
邪悪で不敵な光秀の笑みに、馬乗りになっていた男が、一瞬たじろいだ。襟にかけた指が止まる。
「心配なさらなくとも私は逃げませんよ?このように拘束されては非力な私ではとても……ククク」
「何をやっておる、拙僧に代われ!」
痺れを切らし、顕如が男を押し退けた。筋肉と筋肉がぶつかる重厚な音と、この部屋で一番の熱気が、光秀に覆い被さる。
「まずはその口を塞いでくれよう」
顕如が、着物を脱いだ。程好く油の乗った分厚い筋肉とその身体に相応しく極太に育った肉棒が、むわんと男臭い湿気と共に光秀の眼前に現れる。 分厚い手が白い髪と顎を掴み、圧倒的な質量が、光秀の喉奥まで埋め込まれた。鼻から息ができぬほど膨らんだそれに、流石の光秀もヒューヒューと細い呼吸を繰り返す。 その動きに呼応するかのように、顕如は膨張を続けた。 僅かな酸素を求め開けっぱなしにされた光秀の口からは、唾液が止めどなく流れ、床に広がる銀糸を濡らしていく。
「あ……っん…はぁ……ぁ」
光秀が苦し気に藻掻くことなどお構いなしに顕如は腰を進めた。
「その方等、この者に躍動する筋肉の恐ろしさ思い知らせてやるのだ!」
「筋肉了解!」
一斉に裸になった男達の身体は、皆一様に鍛え抜かれ、弾けんばかりのたわわな筋肉に覆われている。 そして全員が全員、熟した筋肉に恥じぬ巨根を、その股間に屹立させていた。 息苦しく途切れそうな意識の中で、光秀は床を掻き毟る。その両手に熱くて硬いものが差し出され、蠢かせていた指のまま、必死にそれを掴んで摩った。
「……う…っが、は……ぁん」
息ができない。視界が霞む。 今まさに白目を剥いて失神しそうな光秀の口中に、顕如は白い濁流を解き放った。 大分と奥まで差し込まれていた為、光秀はその殆どをそのまま飲み込んでいく。 しかし顕如が退いたと同時に急激に再開した呼吸により、逆流が光秀を襲った。光秀の口から鼻から、よだれと精液がドロドロ鬼混ざりながら零れ落ちていく。
「休んでおる暇なぞないわい」
顕如が漸く下り、圧迫感から解放されたのも束の間、すぐに別の男のものが、まだ肩で息をする光秀の口に宛てがわれる。顕如程ではないそれに、光秀は少しだけ、安堵した。とはいえ苦しいことに変わりはない。だが少しだけ楽に呼吸をする光秀を、男達は見逃さない。
「顕如様、この者どうやら拙僧のものでは満足できないようであります」
光秀の口に出し入れしながら、男は顕如を振り返った。
「ガハハ!拙僧の筋肉棒がそんなに恋しいか」
「顕如様の偉大さを存分に味わいたいようでありますな」
光秀の裸体にそれぞれの欲望を擦りつけながら、周りの男達も口々に顕如の再戦を乞う。
「ちと早い気もするがまたとない機会じゃ。拙僧の筋肉、存分に味わうが良い!」
青い血管の浮かぶ複数のそそり立つ肉の棒に、光秀は取り囲まれている。 既に何度か各々が好きな場所に精を吐き出され、その周りは肉欲の坩堝となっていた。
「魔王の眷属めが。貴様こそ修行の妨げとなる悪魔よ」
顕如は光秀の背後に回り込み、閉じられていた太腿を押し広げた。
「ん…っあぁ……」
柔らかな双丘の谷間で、小さな菊の花がひくひくと痙攣している。
「汚らわしい煩悩は全て貴様に注ぎ退治してくれよう。これで拙僧達は、明日よりもっと清らかに筋肉修行に励めるわい!」
「ああ…っん!ああ!」
焼けた棍棒と言っても大袈裟ではないほどに太くて熱い塊が、光秀の身体を貫いた。 大きすぎるそれは、内部にみっちりと食い込んでなかなか動かない。しかし顕如の呼吸や鼓動に合わせ、血管が生き物のように、光秀の中でどくどくと躍動している。
「ぃ……あ…っあ、ん」
じわじわと与えられる快楽に耐え切れず、光秀はゆらゆらと妖しく腰を振り始めた。次第に湿り気を帯びうねうねと咥えこむ内部に誘われて、顕如の昂りも、光秀の中でびちびちと暴れだす。 ぐちゅりぐちゅりぐりゅりぐりゅり――湿った音が清らかな本堂に谺する。
「この者、顕如様が打ち付ける度に余計にいやらしく拙僧のものを扱くであります」
「拙僧の方もであります」
「なんと!まだ仕置が足りぬか」
「ひっ……あぁ!ああん…っ」
男のものに塞がれた口から、最早誰の何かも分からぬ汁と喘ぎが枯れることなく溢れていた。白銀の髪さえも、元の白とは別の白で汚されている。
「あぁ!ああ…っ」
何度も跳ね上がる身体を押さえ込み、光秀の中いっぱいに膨れ上がりながら、顕如は煩悩の限りを尽くした。
「う…あ……んん、あぁ…っああ」
突如光秀の身体が、これまで無理やり押さえていたのとは比べ物にならない痙攣を始め、顕如はたまらず、その巨体で覆い被さる。押し寄せる波に合わせ、ざわめき収縮を繰り返す光秀の体内は、共に快楽の頂へと顕如を導こうとしていた。
「く…成敗してくれるわ」
発情した猪のように全身の毛穴から汗を吹き出しながら、顕如は光秀の最奥へと、己の煩悩を解き放った。 ぐったりと動かなくなった光秀から、顕如がのっそりと離れる。汗ばんだ太腿に、どろりと粘性のある白い液が流れていく。 絶頂したであろう弛緩しきった光秀に、周りの男たちも続々と、溜まった欲望の塊を浴びせかけた。
「ふん、織田に送りつけてくれるわ」
荒い息を整えながら、顕如は勝鬨を上げる。 戦勝の雰囲気に、本堂の男達は喜びを分かち合った。 そして、そんな男達の中に、いつの間にか光秀が混じっている。
「まだ……足りませんねぇ」
光秀がにたりと笑うのが、その場にいた全員に分かった。
「やれやれ。すっかり汚れてしまいました……井戸、お借りしますね」
光秀の声に、応える者はいなかった。動く者すらもう、この場にはいない。
「ふう…こちらの水はなかなか良い水ですね。信長公もさぞ、お喜びになるでしょう……それにしても」
またぞくぞくと、体が疼く。殺し、交わり、生と死の遣り取りは、無限の快楽を連れてくる。
「僧侶とは随分と溜まるものなのですね」
今回の出撃で信長はどれほど自分を認めてくれるだろうか。 築き上げた死体の山を満足気に眺め、光秀は新たな興味の元へと、足を進めた。