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信之×光秀

「ご褒美ですよ。」 そういって二人で出掛ける予定を貰った信之は、部屋の中をうろうろと歩き回っていた。これは俗に言うデートと言うものでは無いのか。 そう思えば更に落ち着かず、巨体を右往左往に移動させる。 何処に行こうかと思いを馳せてはうんうんと唸っていた。だか、これと言った気のきいた場所は思い浮かばずに、更に頭を悩ませる。頭を悩ませては、二人っきりで出掛けるのだ……と思い、落ち着かぬ気持ちと何故か緩む頬を押さえ込むように挟み込むように小気味いい音をたてて自分の頬を叩いてみる。 が、すぐに緩む頬。 うきうきと浮き足立つ気持ちはどうしようもなく、兎に角今日は一度寝てしまおうと所定の位置に布団を引いて横になってみたものの、そわそわともぞもぞとした気持ちが胸を騒ぎ立てそのまま勢いよく布団を吹っ飛ばして起き上がる。 何処に行こう。 喜んで貰いたいと思った。二人並んで歩いて、自分の隣で楽しそうに笑んでいるかもしれぬ相手の事を思えばそのまま部屋の隅から隅まで勢いよく転がってはじたばたと足をもどかしげにばたつかせてはまた、勢いよく起き上がる。 そわそわとした思いが腹から胸を満たして寝付けない。 寝よう寝ようとすればするほど目が冴える。 深呼吸を数回してみる。 心を無心にしてみる。 羊を数えてみる。 そうこうしてはみるものの、すぐにそわそわとしたものが腹から胸を一杯にして、部屋の隅から隅へと転がり往復しては大声を張り上げたい気持ちを圧し殺してバタバタと足をばたつかせる事を繰り返していた。 「……寝付けない。」 二人で出掛ける事が決まっただけでこれでは、前日はどうなってしまうのだろうかと転がり果てた部屋の隅でぼんやり考える信之であった。

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